活動報告
日本国際交流センター(理事長・大河原昭夫、以下JCIE)ならびに東アジア・アセアン経済研究センター(事務総長・ 西村英俊、以下ERIA)は、7月27日(月)のプレスリリースに続き、7月31日(金)に第1回「アジア健康長寿イノベーション賞」の受賞発表式をオンラインで開催しました。
「アジア健康長寿イノベーション賞(Healthy Aging Prize for Asian Innovation、以下HAPI)」は、日本政府によるアジア健康構想の一環として、ERIAおよびJCIE が2020年に創設した表彰事業で、健康長寿の達成、高齢者ケアの向上に資する取り組みをアジア各国から募集し表彰するものです。テクノロジー&イノベーション、コミュニティ、自立支援の3分野で、高齢化による様々な課題の解決となる革新的なプログラム、サービス、製品、政策を募集・表彰することにより、アジア地域内で優れた知見を共有、その実際の応用を後押し、この地域の共通課題である急速な高齢化に共に対応していくことを目的としています。
本受賞式の概要は以下の通りです。受賞式の様子は下記の英語オリジナル版、日本語通訳付きの動画でご覧ください。
オリジナル(英語)
日本語通訳付き
冒頭、大河原JCIE理事長より、第1回の応募では予想を上回る12か国・地域から134件もの応募があった旨紹介がありました。本来であれば対面での表彰式が予定されていたものの、新型コロナウイルスの感染拡大により急遽オンライン形式に変更せざるを得ない状況のなか、ZoomとYouTubeのライブ配信を通じて受賞団体を祝福する機会にしたいと主催者として挨拶がありました。
続いて、西村ERIA事務総長からは、どの事例もインスピレーションに富んでおり、一国際選考委員として、その中から受賞団体を決めるのは非常に困難であったとし、全ての応募が評価の栄誉に値する旨、強調されました。
受賞発表では、各部門の大賞受賞3団体の発表に続き、これまでの取り組みや今後の展望を紹介するショート・ビデオが放映され、各団体が喜びをもって、その優れた取り組みを参加者と共有しました。
西村ERIA事務総長からは、祝辞が贈られ、受賞理由としてその独自性や持続可能性、周辺諸国への普及効果などが説明されました。大賞は各部門において、次の3か国3団体に贈られました。
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アジア健康長寿イノベーション賞 大 賞 |
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【テクノロジー&イノベーション部門】 バディ・ホームケア:地域に根付いたヘルスケア管理とモニタリング・システム 【コミュニティ部門】 【自立支援部門】 病院と自治体との協働による脳卒中再発予防のためのセルフマネジメント支援の取り組み
大賞・準大賞事例の詳細(英文)はこちら |
続いて、国際諮問委員会の委員長を務める武見敬三参議院議員からは、今回の応募では高齢者の権利と尊厳を守る多くの優れた事例が寄せられたとし、本賞がアジア諸国の情報共有のプラットフォームとなり、各国が持続的成長に貢献するための、活力ある社会を生み出す糧となるとの確信を表しました。
続いて、同委員会の委員を務めるマレーシア高齢化研究所のテンク・アイザン・ハミッド所長からは、多くのアジア諸国が人口高齢化に直面する今、本賞は時宜を得ている取り組みであるとコメントが寄せられました。第1回にして100件以上の応募があったことは、本賞がアジア地域内で意義ある賞だと認識されている証であり、来年以降もより多くの応募が寄せられることへの期待を示しました。
終わりに、大賞3団体に続き、選考委員が特に優れた取り組みであり、評価に値すると考える次の6か国からの7事例が準大賞として称えられ、受賞式は締めくくられました。
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準大賞 | |
パトゥムタニ県ブンイトー市 STRONG Model Program (タイ) 株式会社 ぐるんとびー 団地を一つの大きな家族に (日本) 国境なきヘルプ財団 forOldy Project forOldy Grandpa and Grandma Shop (タイ) インドネシア・ラマ・ランシア財団 Indonesia Elderly Friendly Community Program(インドネシア) 韓国高齢者福祉センター協会 (KASWC) KB Good Memory School: A Senior Center–Based Dementia Prevention Program(韓国) スマート・ピープ社 SmartPeep AI Elderly-Sitter System(マレーシア) ベトナム高齢者協会 Bright Eyes Program for Older People in Vietnam(ベトナム)
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【アジア健康長寿イノベーション賞(HAPI)の背景】
本賞が創設された背景には、アジアにおける人口高齢化が非常に速いスピードで進展していることが挙げられます。現在の東アジアと東南アジアの 65 歳以上高齢者人口は約 2.7億人ですが、2050年には5.7億人と2倍以上になると推計されています*。65歳以上の高齢者の人口割合が7%を超えた社会を「高齢化社会」(aging society) 、14%を超えた社会を「高齢社会」(aged society) と呼びますが、欧米では高齢化社会から高齢社会に変わるまで何世代もかかったのに対し、日本は24年、アジアの多くの国では、日本と同程度か、より短い期間で高齢社会に移行すると予想されています。
アジアでは、かつての日本のように複数の世代が一緒に暮らし、家族が年老いた親の世話をする社会規範が色濃く残っています。しかしその一方で、多くの国で経済発展と産業構造の変化、都市部への人の移動や単身世帯の増加などにより、家族の中での高齢者ケアの担い手が減ってきているのも現状です。ケアを家族だけのものとせず、公的サービスに加え、コミュニティの仕組みの整備や民間事業の取り組みを活用することで、どのような人も予防、医療や介護のサービスにアクセスできるようにすることが求められています。健康な高齢者を増やすことで高齢者の経済的・社会的な自立を促し、経済的にも社会的にも活力ある健康長寿社会を構築することは、今後のアジアの持続可能な成長にとり重要課題となっています。
* United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division, World Population Prospects: The 2019 Revision, Key Findings and Advance Tables (2019).
詳細は以下をご覧ください。
- Healthy Aging Prize for Asian Innovation(英文): https://www.ahwin.org/award
- アジア健康長寿イノベーション賞(和文): https://recordjcie.com/2019/12/04/hapi/
- Asia Health and Wellbeing Initiative (アジア健康構想の高齢化関係の特設ウェブサイト)(英文):https://www.ahwin.org/
- アジアの高齢化の現状(英文): https://www.ahwin.org/data-on-aging/
【日本国際交流センター(JCIE)】
日本国際交流センターは、民間レベルでの政策対話と国際協力を推進する公益法人。民間外交のパイオニアとして、1970年の設立以来、非政府・非営利の立場からグローバルな知的交流事業を実施している。東京とニューヨークを拠点に、外交・安全保障、グローバルヘルス(国際保健)、ダイバーシティ、グローバル化と外国人財などの多角的なテーマに取り組む。