活動報告
2023年、日本が議長国となるG7サミットが、「平和都市」広島で開催されます。日本国際交流センター(JCIE)では、急速に再構築が進むグローバルヘルス・アーキテクチャーの中で、G7が掲げるべきグローバルヘルスに関わるアジェンダや推進すべき具体策について日本政府に提言することを目的に、2022年7月、「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員会(委員長:武見敬三 参議院議員、幹事:大河原昭夫 JCIE理事長、いずれも当時の役職)のもとに「2023年G7グローバルヘルス・タスクフォース」を設置し、2023年4月に提言を発表し、日本政府に提出しました。英語のページはこちら。
提言
◆全文(英文)
(より強靭な保健医療体制のためのグローバルな連帯の促進:2023年G7への提言)
概要
【英文(原文)】(全文お読みいただく場合には、ランセット誌サイトにて無料アカウントの登録が必要です)
The Lancet. Published: April 04, 2023. DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(23)00690-6
【和文(仮訳)】
保健医療システムの強靭性を高めるためのグローバルな連帯の促進:G7広島サミットへの提案
◆関連文書:「100日ミッション・プラス」班 提言
本タスクフォース内の3つの班のうち「100日ミッション・プラス」班が、G7に求められるアクションに加え、日本として「100日ミッション・プラス」関連分野において求められることを別途提言書にまとめて公表しました。
2023年G7GHTF 100DMプラス班提言「100日ミッション達成に向けたG7への提言」
問題意識
- 2023年5月19-21日、平和都市である広島でG7サミットが開催される。国連安保理常任理事国であるロシアのウクライナ侵攻により、現行の国際的な枠組みに多くの問題が提起され、日本が平和で安定した国際社会の実現にいかに貢献しうるか、その外交力の再構築が求められています。その中にあって、グローバルヘルスは日本の外交力を再構築する上で柱になり得る重要なテーマです。
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界同時多発的な拡大を受けて、グローバルヘルスの分野では、保健と社会・経済・安全保障との関連がより一層明らかになり、保健セクターを超えた首脳レベルのコミットメントとリーダーシップの必要性が指摘されています。また、パンデミックを含む健康危機への対応と備えをいかに強化するか国際社会で活発に議論されています。
- 日本では、2022年5月24日に、「グローバルヘルス戦略」が取りまとめられました。その中では、①パンデミックを含む公衆衛生危機に対するPPR(予防・備え・対応)の強化に寄与するグローバルヘルス・アーキテクチャー構築への貢献、②人間の安全保障を具現化するため、ポスト・コロナの新たな時代に求められる、より強靭、より公平、かつ、より持続可能なユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成が大目標に掲げられました。
- 前回日本が議長国を務めた2016年 G7伊勢志摩サミットにおいて取りまとめられた「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」が打ち出したUHCの達成と健康危機への対応を車の両輪とする政策枠組みは、COVID-19の経験を踏まえて一層重要性を持つようになったと言えます。加えて、今後の世界の人口変動や疾病構造の変化を見据えた備えを後押しすることも、持続可能なUHCを標榜し、2019年のG20大阪サミットにおいてG20として初めて高齢化を取り上げた日本が推進すべき課題の一つとなります。
- 以上を踏まえ、本タスクフォースは、G7以外の国々の多様なセクターの代表者も交えた国際対話を実施する中で、現在世界で進められている議論に積極的に参加しつつ、変化を遂げる国際社会における日本の立ち位置を再確認し、2023年G7議長国としてリードすべき分野を見極め、追求すべき具体策を検討しました。
主要テーマ
- 強靭・公平・持続可能なUHC
- 100日ミッション及び製造・供給のあり方(略して「100日ミッション・プラス」)
- グローバルヘルス・アーキテクチャー構築
活動概要
- PAN/JCIE/東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)共催ディセミネーション・イベント(4月5日)[動画(英語)]
- C7及び国際的なCSO代表との対話(2月10日)
- 100日ミッション・プラスに関する対話(2月8日)
- 100日ミッション・プラスに関するスーミヤ・スワミナサン元WHOチーフ・サイエンティストとの懇談(2月7日)
- グローバルヘルス・セキュリティ・コンソーシウムとの対話(2月6日)
- グローバル・サウスとの対話(2月2日)
- GII/IDIに関する外務省/NGO懇談会NGOメンバーとの対話(2月2日)
- G20保健・開発パートナーシップ主催H20対話(UHCに関する提言案についての意見交換)(2月1日)
- 国際アドバイザーからの意見聴取(1月21日~2月8日)
- ラヴ・アガワル インド保健・家庭福祉省保健局副局長との懇談(12月16日)
- 「グローバルヘルスと人間の安全保障」運営委員のコメント聴取(12月7日)
- ジェレミー・ファラール ウェルカム・トラスト ディレクターとの懇談(12月6日)
- 城山主査と米国グローバルヘルス関係者とのワシントンD.C.ラウンドテーブル(11月30日)
- スコット・ペンダーガスト WHO健康危機対応戦略プログラム・パートナーシップ ディレクターへのヒアリング(11月29日)
- 世界経済フォーラム 地域ワクチン製造コラボラティブ(RVMC)関係者との懇談(11月22日)
- WHO Intelligence Hub関係者へのヒアリング(11月22日)
- Pandemic Action Network(PAN)へのヒアリング(11月18日)
- 城山主査の英国訪問(10月下旬)
- 国際アドバイザーからの意見聴取(10月下旬~11月上旬)
- 日独グローバルヘルス会議(2022年10月19日)
- リチャード・ハチェット CEPI事務局長との懇談(10月18日)
- フルウェン・フィルポット 国際パンデミック・プリペアードネス事務局事務局長と100日ミッション・プラス班との懇談(10月12日)
- ジャスティン・クーニンUHC2030共同議長と強靭・公平・持続可能なUHC班との懇談(9月29日)
メンバー
主査 |
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城山 英明
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東京大学公共政策大学院・大学院法学政治学科研究科教授、東京大学未来ビジョン研究センター(IFI) センター教授 |
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副主査 |
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中谷 比呂樹 |
慶應義塾大学医学部 訪問教授 |
國井 修
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公益社団法人 グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund) 専務理事・最高経営責任者(CEO)<「100日ミッション・プラス」班座長> |
詫摩 佳代 | 東京都立大学法学部 教授<「グローバルヘルス・アーキテクチャー構築」班座長> |
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日本ワーキング・グループ(五十音順) |
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阿部 圭史 | 政策研究大学院大学政策研究院 シニア・フェロー |
阿部 サラ |
国立がん研究センターがん対策研究所予防研究部 室長<全体取り纏め補佐> |
池田 千絵子 |
国立国際医療研究センター国際協力局長<「強靭・公平・持続可能なUHC」班座長> |
稲場 雅紀 |
特定非営利活動法人 アフリカ日本協議会 共同代表、GII/IDIに関する外務省/NGO懇談会 代表 |
近藤 尚己 | 京都大学大学院医学系研究科・医学部社会疫学分野 教授 |
柏倉 美保子 | ビル&メリンダ・ゲイツ財団 日本常駐代表 |
具 芳明 |
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科統合臨床感染症学分野 教授 |
坂元 晴香 | 東京女子医科大学国際環境・熱帯医学講座 准教授 |
神代 和明 | 東北大学大学院医学系研究科微生物学分野 助教 |
鈴木 智子 | JCIE チーフ・プログラム・オフィサー<全体調整> |
武見 綾子 | 東京大学先端科学技術研究センター 准教授 |
野村 周平 | 慶應義塾大学 医学部 医療政策・管理学教室 特任准教授 |
西野 義崇 | JCIE リサーチ・アソシエート<全体調整補佐> |
橋爪 真弘 |
東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学 教授 |
藤田 卓仙 | 世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター ヘルスケア・データ政策プロジェクト長 |
松尾 真紀子 | 東京大学公共政策大学院 特任准教授 |
※関係省庁、関係機関にもオブザーバーとしてご協力いただいた。
(2023年4月現在)
国際アドバイザー(アルファベット順)
ラヴ・アガワル (Lav Agarwal) |
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インド保健・家庭福祉省保健局副局長 |
マニカ・バラセガラム (Manica Balasegaram)
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グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ(GARDP)エグゼクティブ・ダイレクター |
セス・バークレー (Seth Berkley) |
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Gaviワクチン・アライアンスCEO
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ジョー・セレル (Joe Cerrell) |
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ビル&メリンダ・ゲイツ財団マネージング・ダイレクター
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アワ・マリ・コルセック (Awa Marie Coll-Seck) |
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セネガル大統領付国務大臣
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トーマス・クエニ (Thomas B. Cueni) |
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国際製薬団体連合会(IFPMA)事務局長
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マンディープ・ダリワル (Mandeep Dhaliwal) |
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国連開発計画(UNDP)HIV・保健・開発グループ ディレクター
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アラン・ドネリー (Alan Donnelly) |
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G20保健・開発パートナーシップ議長 |
フィリップ・デュネトン (Philippe Duneton) |
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Unitaid事務局長
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マーク・ダイブル (Mark Dybul) |
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ジョージタウン大学医学センター教授、同グローバルヘルスとクォリティセンター共同代表 |
ビクター・ザウ (Victor Dzau) |
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全米医学アカデミー(NAM)会長 |
ジェレミー・ファラール (Jeremy Farrar) |
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前ウェルカム・トラスト・ディレクター
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フィリップ・フォシェ (Philippe Fauchet) |
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ミラセンス・パートナーズ創設者、元グラクソ・スミスクライン代表取締役社長 |
リチャード・ハチェット (Richard Hatchett) |
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感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)事務局長
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リチャード・ホートン (Richard Horton) |
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ランセット誌編集長
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ナタリア・カネム (Natalia Kanem) |
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国連人口基金(UNFPA)事務局長
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イローナ・キックブッシュ (Ilona Kickbusch) |
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ジュネーブ国際開発高等研究所グローバルヘルスセンター創設者、議長 |
ジャスティン・クーニン (Justin Koonin) |
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UHC2030実行委員会共同議長
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スティーブン・ラワリアー (Steven Lauwerier) |
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国連児童基金(UNICEF)プログラムグループ保健部長代行 |
ローズマリー・ブル (Rosemary Mburu) |
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ワキ・ヘルス事務局長
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クアット=チー・ハイ=オアン (Khuat Chi Hai Oanh) |
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コミュニティ開発イニシアティブ支援センター事務局長
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フランシス・オマスワ (Francis Gervase Omaswa) |
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グローバルヘルスと社会変革のためのアフリカセンター(ACHEST)事務局長兼創設者 |
スコット・ペンダーガスト (Scott Pendergast) |
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世界保健機関(WHO)健康危機対応戦略プログラム・パートナーシップ ディレクター |
ピーター・ピオット (Peter Piot) |
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ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院教授、新型コロナウイルスに関する最高科学顧問、欧州委員会委員長のEU統括科学アドバイザー(感染症) |
マイケル・ライシュ (Michael R. Reich) |
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ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院国際保健政策武見名誉教授
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ディア・サティアニ・サミナルシ (Diah Satyani Saminarsih) |
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インドネシア開発イニシアティブセンター(CISDI)創設者・CEO |
ピーター・サンズ (Peter Sands) |
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世界エイズ・結核・マラリア対策基金事務局長
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渋谷 健司 (Kenji Shibuya) |
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東京財団政策研究所研究主幹 |
フアン・パブロ・ウリベ (Juan Pablo Uribe) |
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世界銀行保健・栄養・人口グローバルディレクター、女性・子ども・青少年のためのグローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)ディレクター |
パトリック・ヴァランス (Patrick Vallance) |
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前英国政府政府最高科学顧問、国際パンデミックの備え事務局実行委員会議長 |
ワライポン・パッチャラナルモ (Walaiporn Patcharanarumol) |
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タイ保健省グローバルヘルス課長、国際保健政策プログラム(IHPP)財団事務局長 |
山本 尚子 (Naoko Yamamoto) |
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国際医療福祉大学大学院教授 |
ロバート・イェイツ (Robert Yates) |
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チャタムハウス グローバルヘルスプログラム局長、ユニバーサル・ヘルス・センター エグゼクティブ・ディレクター |
(2023年4月現在)
※本タスクフォースで意見聴取したヒアリング先一覧はこちら。
【参考】過去のG7/G8サミットに対しても、JCIEが主催する研究会等で提言書を提出しています。活動報告「グローバルヘルスと人間の安全保障」のページの「出版物」の項目をご覧ください。