活動報告

 

日本国際交流センター(JCIE)は、2021年9月8日に、「外国ルーツ青少年未来創造事業」(以下、SYDRIS)の一環として、第4回ネットワーク会議をオンライン形式で開催しました。今回は、SYDRISの助成先団体の関係者をはじめ、JCIEとの連携事業に基づき助成先団体への支援活動に参加している住友商事株式会社の社員・事務局と一般財団法人 日本民間公益活動連携機構の関係者計約30人が参加しました。

 

今回の会議は、「行政との協働をどう進めるか―外国ルーツ青少年の視点に立った事業づくりに向けてー」をテーマに、日本で暮らす外国ルーツ青少年とその家族との共生を図るうえで、彼/彼女たち当事者の視点にたった事業を進めるために、政府と市民公益活動団体とがいかなる協働関係を構築すべきかを探索することを目的としました。

 

外国ルーツ青少年の教育の充実化に向けた協働とは

 

第1部では、文部科学省国際教育課 小林美陽氏にご登壇いただき、「外国人児童生徒教育の現状と課題」をテーマにご講演いただきました。小林氏は、日本語指導が必要な児童生徒の多様化、国内における集住化・散在化や不就学等の課題を踏まえて実施されてきた文部科学省の様々な施策を紹介するとともに、学校や地域での外国人児童生徒教育の充実化が一層問われているとの政府の問題意識を述べました。また、文部科学省が実施している「帰国・外国人児童生徒等教育の推進支援事業」などの施策の活用を地方自治体に促していると述べ、地方自治体と市民公益活動団体が協働して、学校や地域での支援体制づくりに活用している事例を紹介しました。

 

小林氏の話を受けて行われた質疑応答では、外国ルーツ青少年に関わる事業に対する政府の予算の変遷や、文部科学省の施策の活用があまり進んでいない空白地域の存在が象徴する地域間・学校間の格差、地域における自治体と市民公益活動団体の協働の促進と果たす役割の明確化について活発な意見交換が行われました。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外国ルーツ青少年とその家族の日本語教育をめぐる協働を考える

 

第2部では、文化庁国語課 増田麻美子氏にご登壇いただき、「外国ルーツ青少年とその家族の日本語教育をめぐる協働を考えるー「生活者としての外国人」のための日本語教育の取組―」をテーマにご講演いただきました。増田氏は、コロナ禍の影響と思われる国内の日本語学習者数の減少や、日本語教室の中止等の現状とともに、ボランティアや非常勤が大半を占める日本語教育の担い手をめぐる課題について述べました。その上で、「日本語教育の推進に関する法律」が2019年6月28日に公布施行され、「日本語教育の推進に向けた基本的な方針」に国や自治体の責務が示されたことを説明しました。これを踏まえ、自治体が日本語教育の基本計画を策定し、日本語学校やNPO、企業等と連携している事例等を紹介しました。また、日本語教育機会の拡充に向けた市民公益活動団体との連携・協働を推進しており、地域の課題解決につながる連携事例やコーディネーター等の専門人材の活躍への期待を述べました。

 

増田氏の話を受けて行われた質疑応答では、日本語学習支援における文部科学省と文化庁の事業対象の違いや、地域の市民公益活動団体による事業提案の可能性、私立高校や外国人学校のような学校内での日本語教育の隙間への対応、母語による日本語学習の必要性とそのための学習ツールなど、「地域」、「生活者」を切口にした外国ルーツ青少年とその家族への支援について話し合いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上のように、第1部と第2部を通じては、文部科学省と文化庁の支援事業が対象とする内容や範囲の詳細、それぞれの省庁における政策展開において目指していること、支援が行き届いていない空白地域に対する施策や対応、NPOに求められている役割、NPOと行政との連携のあり方等について様々な質問が挙がり、小林氏と増田氏との活発な意見交換と議論が交わされました。また、参加者間でも、日本語教育や外国ルーツ青少年の母語・母文化の背景を踏まえた教材開発について互いに情報提供が行われるなど、各団体がもつ情報や知見が積極的に共有されました。

 

それらを踏まえて、クーリングダウンのセッションでは、団体から国の施策に対するアイディアや具体的な提案がありました。例えば、空白地域における施策の実施と格差是正に取り組むための個別事業における予算枠に柔軟性が必要であることや、国から自治体に予算を流すという今の資金の流れを補完する形として、国の補助金を地域の市民公益活動団体と自治体が構成する共同体に供与する流れを作るなど、課題解決に向けたモデル事業の展開の促進の必要性が提案されました。加えて、異なる省庁が関わる日本語教育について、学校教育修了後、就労準備前、就労準備後といった、関係省庁が関わる各段階の日本語教育間の接続を行い、学校教育から仕事への接続をスムーズにつながるような日本語教育の枠組み作りの重要性も話し合いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

資料

・ プログラム

・   参加者

・「外国人児童生徒等教育の現状と課題

 (文部科学省国際教育課 小林美陽)

・「外国ルーツ青少年とその家族の日本語教育をめぐる協働を考えるー「生活者としての外国人」のための日本語教育の取組―

   (文化庁国語課 増田麻美子)

 

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