活動報告

本年度の日英21世紀委員会第37回合同会議は、当初、日本で開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大およびそれに伴う移動制限により、対面での会議実施が出来ず、9月11日・12日に日本側20名、英国側19名の参加を得て、オンラインで開催されました。

 

今回の合同会議では、「日英両国の政治・経済状況」、「パンデミック後の世界秩序」、「パンデミック後の貿易・投資」、「グローバル・ガバナンスの能力と信頼の構築」について討議が行われました。

 

本会議の議長ステートメント・提言、詳細プログラム及び参加者は以下のとおりです。

 

議長ステートメント・提言和文

議長ステートメント・提言英文

日 程

参加者

 

【第37回合同会議討議概要】

 

セッション1:日本の政治経済の現状

8月下旬の安倍首相の辞任表明を受けて、次期首相就任、2021年10月に任期満了を迎える衆議院議員総選挙までの政局、次期官房長官人事など政局予想がなされました。また、新政権での外交政策・経済政策に関しては、外交・経済政策、米国との同盟関係、その他の国々との安全保障協力について、従来の路線を継承するものと予想。将来的なリスクとして、金融機関の健全性が継続維持できるか、人々の行動と日本経済構造そのものの変化などが挙げられました。

 

セッション2:英国の政治経済の現状

英国ではCOVID-19拡大による経済への打撃が影響し、今後いかに財政支出を抑制するかが大きな問題となっています。貿易・投資面では、英国のEU離脱、EU諸国や他国との貿易協定等、移行期間中の課題が多い。また、スコットランド独立といった連合王国の将来に関する課題など、英国政治を不透明な状況にしている要因について報告がなされました。

 

 

セッション3:COVID-19拡大後の世界秩序

このセッションでは、国際社会が直面する諸問題、要因および問題解決に向けた日英両国の協力について討議が行われました。2020年のCOVID-19拡大によって、国際社会の脆弱性と将来の不確実性が一部露呈している状況の中、今後は、益々多国間の共同協力活動が必要になるであろうと思われます。今回の会議では、具体的に中国の電子商取引拡大が既存の金融システムに与える影響や、米国の通商政策が取引重視であること、WTO体制下における地域貿易協定の可能性に関する課題も議論されました。二国間協力の分野では、気候変動と保健衛生問題が議論されました。日英両国にとって、共通の戦略的利益を明確にすることが重要であり、緊密な連携の下、気候変動問題において、COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)に向けた準備作業の重要性や、保健衛生分野におけるデジタル化の進展とデータ管理についても議論されました。日英両国が、米国など志を同じくする国々とより強固な協力関係を築くとともに、国際秩序の強化に向けて協力することも重要であることを指摘しました。

 

セッション4:COVID-19拡大後の貿易投資の展望

今後の英国とEU間の貿易協定や、COVID-19拡大後のサプライチェーンや貿易問題等に関して、議論が行われました。英国は、EUとの貿易継続のため、合意なき離脱とならないよう、自由貿易協定締結へ向けて最大限の努力をすべきであります。両国にとって日英包括的経済連携協定は重要であり大きな成果でもあり、貿易協定の利点、欠点について自国の企業、市民社会、有権者を含む関係者の理解を得る努力をする必要があります。また、日本では、COVID-19拡大によって多くの企業が守りの姿勢に入っており、サプライチェーンへの影響に鑑み、事業の整理縮小、人員削減を行わざるを得ない企業が増加すると予測され、対面式の業務をしなければ、イノベーションを生み出すことは困難であるとの意見が述べられました。英国での規制についても議論され、特に生命科学分野において、EU離脱後の規制方針が重要との議論がなされました。

 

セッション5:グローバル・ガバナンスの能力と信頼の構築

COVID-19に関するグローバルな保健衛生ガバナンス、とりわけ、迅速なワクチン提供および、国内ならびに国際機関への信頼醸成の問題が検討されました。コロナ禍では、迅速な診断、治療、ワクチンなど医療体制を充実すべく、様々な開発がされていますが、英国や日本のようないわゆる「ミドルパワー」が協力していく可能性があります。新たなルールと仕組みの構築の為、日英両国のリーダーシップが重要となることを認識しました。また、ワクチン供給については、医療関係者の建設的な国際協調の一方、政治的思惑が絡んだワクチン争奪戦が起こる懸念も指摘されました。両国が国際社会、地域社会において緊密に連携し国際機関への信頼度が高い傾向がある若者の関心を最大限に活用することについても討議されました。国連や各地域機関等国際組織への信頼を取り戻し、大国が脆弱国の支援から退いた為に生じた中国のデジタル分野での影響力に対抗するため、日英両国が、志を同じくする他国との協力を得てどのような貢献を果たすことができるか検討しました。

 

メディア掲載:

秋田 浩之 日本経済新聞コメンテーター 
「Deep Insightー準大国の休息は終わった」(2020年10月29日)

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