活動報告

日本国際交流センター(JCIE)と東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)は、2021年度事業として、外交・安全保障調査研究事業費補助金を得て「ウィズコロナ・ポストコロナ時代の国際秩序の在り方と日本の役割」研究会を実施しています。本事業では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を踏まえたグローバルヘルス・ガバナンスのあり方を検討すると共に、2023年に日本が主要7カ国首脳会議(G7サミット)のホストを務めることを視野に入れ、日本としてグローバルヘルス・ガバナンスの再構築にいかに貢献すべきか検討を進めてきました。このたびJCIEとIFIは、本研究会の提言公開の機会にあわせ、2022年3月16日に公開シンポジウム「国際的な連帯に基づくポストコロナの グローバルヘルス・ガバナンス再構築 ―G7、G20の果たすべき役割―」を開催致しました。

 

COVID-19は世界同時多発的に拡大し、感染症が高所得国の自国の危機、あるいは安全保障問題化しました。これにより、自由主義的価値に基づくグローバルヘルス・ガバナンスに「ワクチン外交」に象徴されるような国際的な権力関係が持ち込まれ、加えて、ワクチン等の必要な医療ツールが公平に配分されないという南北における健康格差も改めて顕在化しました。また、気候変動が感染症リスクに与える影響やCOVID-19が経済・社会に与える影響等、健康課題と他の脅威との複合性・相互関連性にも着目する必要があります。

 

本シンポジウムでは、同提言を踏まえて、世界の健康格差を是正し、課題の複合性への対応を強化することで、国際的な連帯に基づくグローバルヘルス・ガバナンスをいかに再構築するか、その際のG7及びG20の役割について、今年のG7並びにG20のプロセスにおいて、シンクタンクによるグローバルヘルスに関する政策提言の取りまとめを行っているT(Think)7並びにT20のタスクフォース共同議長をスピーカーに迎え検討し、本年のG7及びG20の議論も踏まえて、2023年G7ホスト国として日本の果たすべき役割を探りました。

 

録画

JCIE Global Studio (YouTube、英語のみ)

 

プログラム

開会挨拶                       大河原昭夫 JCIE理事長・CEO

提言の概要                    城山英明 IFI所長、東京大学公共政策大学院/大学院法学政治学研究科教授、研究会主査

コメント

  • イローナ・キックブッシュ T7グローバルヘルス・タスクフォース共同議長、ジュネーブ国際開発高等研究所グローバルヘルスセンター創設者、議長
  • ハスブラ・タブラニー T20グローバルヘルス・セキュリティとCOVID-19タスクフォースリード共同議長、インドネシア大学公衆衛生大学院前学長

 

パネルディスカッション      (五十音順)

[モデレーター]

  • 勝間靖 NCGMグローバルヘルス政策研究センター(iGHP)研究科長、T20グローバルヘルス・セキュリティとCOVID-19タスクフォース共同議長

[パネル]

  • イローナ・キックブッシュ
  • 坂元晴香 東京女子医科大学 国際環境・熱帯医学講座准教授
  • 鈴木一人 東京大学公共政策大学院教授
  • ハスブラ・タブラニー
  • 牧本小枝 JICA緒方研究所主席研究員

 

閉会挨拶                       城山英明

 

主催機関

主催:(公財)日本国際交流センター(JCIE)、東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)

協力:JICA緒方研究所

 

登壇者略歴

 

     

城山英明

東京大学未来ビジョン研究センター(IFI)所長、東京大学公共政策大学院/大学院法学政治学研究科教授、研究会主査

1989年東京大学法学部卒業。1994年東京大学大学院法学政治学研究科助教授、2006年東京大学大学院法学政治学研究科教授、2010年東京大学公共政策大学院教授。東京大学政策ビジョン研究センター長(2010-2014年)、東京大学公共政策大学院長(2014-2016年)、未来ビジョン研究センター長(2021-)を兼務。2015年2月-文部科学省科学技術・学術審議会臨時委員、2016年7月-2020年7月公文書管理委員会委員、2016年10月-総務省AIネットワーク社会推進会議構成員、2017年9月-日本学術会議連携委員、2018年4月-内閣府自治体SDGs推進評価・調査検討会委員、2021年7月-内閣府グローバルヘルス戦略有識者タスクフォース構成員。専門は行政学で、国際行政、科学技術と公共政策、政策形成プロセスについて研究。

 

 

 

イローナ・キックブッシュ

Ilona Kickbusch

ジュネーブ国際・開発研究大学院大学グローバル・ヘルス・センター創設者およびセンター長

世界健康危機モニタリング委員会(Global Preparedness Monitoring Board)や「すべての人々に健康を」という概念を中心とした価値創造と経済成長を考えるために、主要な経済学者と健康の専門家から構成される新しい会議体(WHO Council on the Economic of Health for All)のメンバーを務めるとともに、ベルリンでの世界保健サミットの評議会議長、ヨーロッパ保健フォーラムガスタインの副代表も兼任。グローバルヘルスに関連するドイツのG7やG20の活動をはじめ、2020年のドイツEU議長国でのグローバルヘルスのイニシアチブやドイツのグローバルヘルス戦略策定のための国際諮問委員会の議長を務め、WHOのパンデミック・疫病情報ハブの設立に向けても貢献する。世界保健機関(WHO)時代には、「健康増進のためのオタワ憲章」や健康都市ネットワークを提唱。エール大学公衆衛生大学院のグローバルヘルス部門のディレクターを務め、グローバルヘルスに関する最初のフルブライト・プログラムの責任者でもあった。グローバルヘルス分野の女性リーダーのリスト「@wgh300」を立ち上げ、SCIANAのリーダーズ・イン・ヘルス・ネットワークのプログラム・チェアやランセット・FT委員会の「2030年の健康未来を支配する:デジタル世界で成長する」(Lancet FT Commission on “Governing health futures 2030: growing up in a digital world “)の共同議長も務めるなど幅広く活躍。 ベルリン・シャリテ大学名誉教授。ドイツ連邦共和国功労十字章(Bundesverdienstkreuz)、WHOメダル(グローバルヘルスへの貢献に対して)他、多くの賞や表彰を受けている。

 

 

 

 

 

ハスブラ・タブラニー

(Hasbullah Thabrany)

米国国際開発庁(USAID)保健資金調達活動のインドネシア国内チーフ・オブ・パーティー、T20世界保健安全保障とコロナ対策タスクフォースのリード共同議長

インドネシア大学医学部を卒業後、米国カリフォルニア大学バークレー校でMPHとDrPHの学位を取得。

インドネシア大学の公衆衛生学部教授として教鞭をとり、学部長、医療経済・政策研究センター長を経て2019年より現職。インドネシアにおける国民健康保険制度(JKN)の発展に尽力してきた功績を買われ、米国ワシントンDCに拠点を置く保健金融法人ThinkWell.Globalが実施するインドネシアにおける持続可能な保健財政を確保するためのエビデンスベースの政策を提供することを目的とした米国国際開発庁(USAID)保健資金調達活動プロジェクトのチーフ・オブ・パーティーを務める。1992年から1995年まで、米国カリフォルニア州サンタモニカのランド・コーポレーションに勤務。母国のインドネシアで健康保険や社会保障の専門家が不足していることに気づき、1998年にそれらの専門家のための協会PAMJAKI(Association of Health Insurance Professionals of Indonesia)を設立。2010年10月まで同協会の会長を務めた。その後、メガワティ大統領が設置した社会医療保険改革タスクフォースの事務局長を務め、インドネシアの医療・社会保障改革を主導した。インドネシアにおけるユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)の設計と現在の達成状況を詳述した本『Jaminan Kesehatan Nasional(JKN)』を出版し、2014年に国民健康保険(JKN)が実施されて以来、JKNがアクセスと医療の質の向上の原則に則って一貫して実施されるよう提唱するための調査・評価を行っている。2013年にインドネシア健康医療経済協会を設立し、その会長に就任。

 

 

 

 

 

勝間 靖

 

NCGMグローバルヘルス政策研究センター(iGHP)研究科長、T20グローバルヘルス・セキュリティとCOVID-19タスクフォース共同議長

海外コンサルティング企業協会(ECFA)研究員として東南アジア、南アジア、南米、ロシア極東地域で開発調査に従事した後、ウィスコンシン大学マディソン校農学・生命科学カレッジでPh.D.(開発学)を取得。その後、国連児童基金(UNICEF)に入り、メキシコ、アフガニスタン/パキスタン、東京事務所勤務を経て、現職。その他、英国のThe BMJ国際諮問委員、国際開発学会理事、国際保健医療学会評議員、ジョイセフ理事、GLMインスティチュート理事を務めている。これまで、国連開発計画(UNDP)『人間開発報告書』諮問委員、世界保健機関(WHO)西太平洋事務局アドバイザー(Law for Health)、国際開発学会副会長、日本国際連合学会事務局長および理事を歴任。このほか、文部科学省「アフガニスタン教育支援タスクフォース」メンバー、国際厚生事業団「注射器の供与方針策定のための基礎研究班会議」委員、内閣府「国連防災世界会議に係る国内準備会合」委員、国際厚生事業団「保健医療分野の国際協力に携わる人材育成の推進のための調査委員会」委員、外務省「国連政策研究会」メンバー、国際協力機構「開発とジェンダー支援委員会」委員、外務省「独立行政法人評価委員会」専門委員。専門は、グローバルヘルスの国際関係とガバナンス、人間の安全保障、開発研究(人間開発)、国際人権論(子どもの権利)。

 

 

 

 

 

坂元晴香

東京女子医科大学 国際環境・熱帯医学講座准教授

医師、博士(公衆衛生学)。札幌医科大学医学部卒業後、聖路加国際病院で内科医として勤務。その後、厚生労働省国際課及び母子保健課に勤務。国連総会や、WHO(世界保健機関)総会など各種国際会議へ日本代表として参加した他、2016年にはG7伊勢志摩サミットやG7神戸保健大臣会合の会合運営にも関わる。2014年には、世界銀行より奨学金を受けハーバード大学公衆衛生大学院似て公衆衛生学修士(MPH)を、2021年には東京大学にて公衆衛生学博士を取得。現在は、東京大学国際保健政策学教室特任研究員、WHO西太平洋事務局コンサルタント、東京財団政策研究所主任研究員を併任。

 

 

 

 

 

鈴木一人

東京大学公共政策大学院教授
2000年英国サセックス大学ヨ-ロッパ研究所現代ヨーロッパ研究専攻博士課程修了。2000年から2008年まで筑波大学国際総合学類准教授として勤務。その間、立命館大学、北九州大学などで非常勤講師を兼任。2008年から北海道大学公共政策大学院准教授、2011年から教授。2012年から2013年にはプリンストン大学国際地域研究所客員研究員。2013年から2015年までは国連安保理イラン制裁専門家パネル委員。2020年から現職。また、 新型コロナ対応・民間臨時調査会ワーキンググループメンバー、福島原発事故10年検証委員会座長として、報告書の取りまとめにあたった。専門は国際政治学、科学技術外交。

 

 

 

 

 

牧本小牧

JICA緒方貞子平和開発研究所 主席研究員

東京大学大学院医学系研究科修士課程修了後、国際協力事業団(JICA、現国際協力機構)に勤務。1998-2000年にはWHO(世界保健機関)西太平洋地域事務局に出向し、同地域のポリオ根絶事業や予防接種事業全般に従事する傍ら、日本の保健援助調整窓口業務を補佐。JICAでは、保健医療分野の技術協力、無償資金協力事業等を担当する部署、アジア地域の保健事業や母子保健・栄養分野とりまとめの課長、また、バングラデシュおよびラオス事務所でのJICA事業管理、現地政府や関係ドナーとの折衝を経験。2017年にJICA研究所(現JICA緒方貞子平和開発研究所)に着任。人間開発領域長を務め、2019年T20(Think 20)東京ではグローバルヘルスグループのとりまとめを担当。

 

 

 

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