活動報告
2020年4月21日、日本国際交流センター(JCIE)は、第5回グローバルヘルスに関する議員ブリーフィング「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアジア諸国の闘い」を開催しました。講師には、世界保健機関(WHO)の葛西 健 西太平洋地域事務局長をお招きし、WHO西太平洋地域の国々におけるCOVID-19の感染拡大状況や各国における取組み、WHO西太平洋地域事務局の支援状況、今後の課題などについてお話しいただきました。COVID-19の感染拡大予防の観点から、今回はテレビ電話会議形式での開催となりましたが、党を超えて12名の国会議員が参加されました。
葛西地域事務局長のブリーフィングの概要は、以下の通りです。
- 感染流行のステージを3段階に分類すると、WHO西太平洋地域の国々はいずれもステージ2(地域社会でクラスターや孤発例が見つかるものの、国内の地域社会での大規模感染に至っていない状況)以下に留まっていると評価している。ベトナムやラオスをはじめ、この地域の多くの国々が感染者の接触者を追跡し、隔離するという政策を実施している。
- また、早期から国境封鎖を実施した太平洋島しょ国は、全ての国がステージ1以下に抑え込んでいると評価している。
- しかし、シンガポールやフィリピン、日本、マレーシアなど、一部の国では未だ感染者が増加している。各国の感染を各国の医療機関が対応できるレベルに抑えると同時に、ステージ3(地域社会で大規模感染が発生している状況)に備えることが重要だと考える。
- WHO西太平洋地域事務局は黒子に徹し、流行に関する情報や対策に関する経験の共有、ナショナル・レスポンス・プランの改訂など、各国の保健省に対する支援を行っている。加えて、個人防護具(PPE)や検査資材の途上国への供給や、国際的な治療薬及びワクチンに関する研究・開発の後押しを行っている。
- 国境封鎖に代表されるような厳しい公衆衛生的措置を永久に続けることはできない。措置の内容が国ごとに異なることを考慮しながら、段階的に解除を検討していく必要がある。感染再燃のリスクは当然あり、場合によっては措置を再開することも考えなければならない。
- COVID-19は、流行の中心地が先進国であるために、世界中でPPEや診断キットの供給が途上国にまで追い付かず、世界的な不足が生じている。いずれ治療薬やワクチンが開発されたときにも同様の問題が生じるかもしれない。国際協調は、大きなチャレンジとして残る。
報告書全文は、こちらからお読みいただけます。
出席議員
黄川田 仁志 衆議院議員(自由民主党)
櫻井 周 衆議院議員(立憲民主党)
佐藤 啓 参議院議員(自由民主党)
自見 はなこ 参議院議員(自由民主党)
武見 敬三 参議院議員(自由民主党)
竹谷 とし子 参議院議員(公明党)
田畑 裕明 衆議院議員(自由民主党)
牧島 かれん 衆議院議員(自由民主党)
三ツ林 裕巳 衆議院議員(自由民主党)
山川 ゆりこ 衆議院議員(立憲民主党)
山田 美樹 衆議院議員(自由民主党)
吉田 統彦 衆議院議員(立憲民主党)
(五十音順敬称略、所属はブリーフィング実施時)
講師略歴
葛西 健 世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長
1990年慶應義塾大学医学部卒業。旧厚生省(現厚生労働省)に入省後、岩手県高度救命救急センターにて勤務。
その後、厚生省保健医療局結核感染症課国際感染症専門官、厚生労働省大臣官房国際課課長補佐、宮崎県福祉保健部次長等を歴任。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院で修士号を取得。
感染症や健康危機管理の専門家としてのWHOでの勤務は15年以上にわたり、アジア太平洋地域の新興感染症への対応や感染症危機管理対策の枠組み構築などに尽力。2006年WHO西太平洋地域事務局感染症対策課長として着任後、同地域事務局健康危機管理部長を経て、2012年WHOベトナム代表に就任。同国における公衆衛生に対する多大な貢献が認められ、2014年ベトナム政府から「国民のための健康勲章」を受賞。その後、WHO西太平洋地域事務局次長兼事業統括部長を経て、2018年10月におこなわれたWHO西太平洋地域事務局長選挙において当選。
なお、本事業は、地球規模課題としてのグローバルヘルスに対する日本の貢献を推進することを目的に実施される「グローバルヘルスと人間の安全保障」プログラムの一環として、2018年9月より開始しました。国境を超える感染症の脅威や、保健医療制度、保健財政などについて中堅・若手の国会議員を対象に定期的なブリーフィングを行い、世界の現状や日本の役割について理解を深め、将来的にリーダーシップを発揮していただくための機会を提供するものです。
グローバルヘルスに関する議員ブリーフィングの過去の開催報告は、以下のリンクからご覧ください。
- 第4回「母子保健への資金調達でSDGs達成を実現する――グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)の役割と日本への期待」
- 第3回「顧みられない熱帯病(NTDs)―― 今求められる日本の知見」(共催:JAGntd(Japan Alliance on Global NTDs)、SDGs・プロミス・ジャパン)
- 第2回「迫り来る薬剤耐性(AMR)の脅威、いま必要な政治のリーダーシップ」(共催:日本医療政策機構(HGPI))
- 第1回「米国のグローバルヘルス外交における連邦議員の役割」