活動報告
第28回日独フォーラムが、2019年12月4日から6日の3日間にわたり、東京で開催されました。日独フォーラムは、1992年の宮沢・コール日独首脳会談により両政府間で設立が合意され、翌年2月に発足した日独間の民間対話フォーラムです。日本国際交流センター(JCIE)は、第1回より事務局を務めています。
今回のフォーラムは、12月4日夕刻の中谷真一外務大臣政務官主催のレセプションに始まり、衆議院第一議員会館国際会議場で2日間本会議が行われました、日本側の小林栄三座長(伊藤忠商事株式会社特別理事)とドイツ側のマティアス・ナス座長(ディ・ツァイト紙外信局長)の進行により、「日独の政治経済情勢:レジリエントな民主主義への課題」、「世界で台頭する保護主義と権威主義への対応」、「日独企業によるSDGsへの取組と日独両極の可能性」と題した3つのテーマについて議論が行われました。また、12月5日の午後には、ドイツ参加者による安倍総理表敬訪問が実施されました。プログラム、参加者及び討議要旨は以下の通りです。
プログラム及び参加者
・日本語
・英語
討議要旨
第一セッション「日独の政治経済情勢:レジリエントな民主主義への課題」では、日本側から、世界が直面している課題として社会の不寛容さ、議会制民主主義の衰退があり、日本でも90年代以降のグローバリズムによる社会経済の変化、少子高齢化の進展のなか、従来避けられてきた政治教育に向き合う必要があるとの基調報告が行われた。ドイツ側からは、連立政権が続いているものの、政府の社会的問題への対応への不満が選挙を通じて政治の不安定化として現れており、各政党が将来のビジョンやナラティブを国民に示すことの必要性が報告された。両方の基調報告を受けて、若い世代による民主主義のプロセスとして討論や政治参加の促進、SNS等による影響を踏まえた新たなメディア教育の重要性、新興国の間で高まる民主主義国への批判に対する対応の必要性等が提案された。
第二セッション「世界で台頭する保護主義と権威主義への対応」では、まずドイツ側から、世界の脅威となりうる巨大国による権威主義的な傾向が強まっていること、NATOの今後を巡るアメリカと欧州側との意見の乖離等欧州における課題の深刻化が提示された。日本側からは、戦後世界的に国家体制として権威主義優位が存在し続けていることへの再認識が必要であることに加え、保護主義の強まりによりNATO等従来の枠組みが形骸化してきたことへの対応が必要であると指摘した。その後、米国のトランプ政権及び中国を巡る日本とドイツの対応の在り方や、香港と台湾の状況、ブレグジット後の英国とEU、ルールに基づく世界秩序の維持について活発な議論が行われた。
第三セッション「日独企業によるSDGsへの取り組みと日独協力の可能性」では、企業と企業による連合会による活動の紹介とともに、気候変動等が生産・物流など企業の活動にも影響を与えるような現状の中で、持続可能な社会に向けて、企業、地域を超えたパートナーシップに基づく取り組みの重要性が提示された。続く議論では、企業による活動と投資が株主中心に行われている現状の変革、SDGsに実行性を持たせるための消費者・市民セクター・投資家の役割の重要性、SDGsの推進に向けた科学技術や教育における日独の協力等が言及された。