活動報告
7月7日(日)から10日(水)にかけて、日韓移住者交流事業の視察交流プログラムとして、昨年に続き、日本に暮らすアジアからの移住者(ベトナム、フィリピン、ネパール、ミャンマー)と韓国を訪問しました。
2回目となる今回の韓国視察プログラムでは、移民・外国人の社会統合のための取り組みや、NPO/NGOと学校、自治体の協働による地域社会における多文化教育などを行っている機関・団体を訪問し、移民・外国人の社会経済的な統合と包摂に向けたホスト社会側と移住者とそのコミュニティの実践に触れることができました。
1日目:仁川市富平区
韓国に到着した7月7日は、韓国でリトル・ヤンゴンで知られる仁川市富平区にある「在韓ミャンマー労働者福祉センター」を訪問しました。センター設立の呼びかけ人で現在運営委員長を務める韓国側の移住者メンバーに、韓国で活動している30以上のミャンマーコミュニティの代表が6か月間議論を重ねた後、2019年3月にオープンしたセンターの設立までの経緯や活動内容について話を聞きました。説明を受けた日本側のメンバーは、移住者コミュニティによる活動の重要性と必要性に共感し、移住者コミュニティの役割や政府との協力の在り方等について活発な議論を行いました。
2日目:ソウル市九老区
視察2日目は、韓国の地方自治体の中で外国人住民の割合が5番目に高く、ソウル市では外国ルーツの子どもの割合が最も高い九老区を訪問しました。ソウル市から「多文化多民族保育園」として指定されている「HWAWON総合社会福祉センター」では、九老区役所の担当者と九老文化財団の関係者の参加も得て、行政とNGO/NPO、企業、地域住民の協力・連携によって取り組まれている様々な活動について説明を受けました。その後、母語教育・バイリンガル教育の在り方とともにや企業による多文化した地域社会への貢献などについて活発な意見交換を行いました。
午後には、外国ルーツの生徒の割合が26%に上り、多文化教育研究学校として新しい取り組みを試みている「九老中学校」を訪問しました。多文化教育課による相談・サポート、多文化週間の設定など文化多様性やあらゆる差別に関する人権教育、一つのクラスで韓国語と中国語を一緒に使って勉強するバイリンガル教室などの取り組み等とともに、外国ルーツの生徒が多い学校ならではの課題について話を聞くことができました。
3日目:ソウル市
視察3日目の午前は、韓国の法務部により運営される社会統合プログラムの実施団体でソウルの拠点センターである「スックミョン女子大学多文化統合研究所」を訪問しました。2009年に始まり、延べ54万人の外国人が受講した社会統合プログラム(KIIP)の狙いや、カリキュラム、オリエンテーション的性格をもつ早期適応プログラムの運営等、社会統合プログラムの概要と実施状況について説明を受けました。日本側メンバーは韓国の社会統合プログラムに高い関心を示し、政府による予算支援や教員の質の確保、社会統合プログラムのこれまでの成果、移住者のニーズの変化等様々な観点から質疑応答が行われました。
続いて訪問した「難民人権センター」では、韓国における難民関連法制度や、難民の状況、難民に対する生活支援、難民の子どもに対する教育支援、難民がかかえる問題・課題について話を聞き、日本と韓国におけるヘイト・スピーチや人種差別をめぐる状況と取り組みについて率直な意見交換をしました。
最後に訪問した「ムジゲ青少年センター」(Rainbow Youth Center)では、外国ルーツの青少年の韓国社会への安定的な適応と社会経済的な自立を目指して、韓国に移住してきた時期・年齢等それぞれの移住段階にそって韓国語学習、編入学、進路・就労のためのプログラムが実施されているとの説明を受けました。日本側のメンバーから様々な質問が投げられ、外国ルーツの青少年への支援・取り組みが韓国語学習から、教育・発達支援、家庭相談、心理カウンセリング、進路・就労支援、文化教育、企業・学校等マジョリティ社会に向けた啓発へと広がっているとの説明を受けました。
4日目:ソウル市、京畿道富川市
最終日となる7月10日の午前は、ソウル市に暮らす外国人住民の44%が集住している西南地域をカバーするワンストップセンターである「西南圏グローバルセンター」を訪問しました。在留資格の種類や有無等、法的身分にかかわらず外国人住民を対象に労働・就労相談、福祉・不動産等の生活相談、無料検診・治療、移住者コミュニティと地域社会とのネットワーキングなどセンターの支援体制について説明を受け、集住地域ならではの支援課題や移住者コミュニティのニーズと協力関係づくりなどについて質疑応答を行いました。
午後には、韓国側のメンバーが代表を務める「アジア人権文化連帯」を訪問しました。多様な人を地域社会に取り込むための基盤づくりに向けた条例制定運動や、企業・学校・市民を対象にした文化多様性・人権教育とそのための講師の育成、帰国する移住者の再統合支援とネットワーキング活動等の取り組みに触れ、多文化人権教育の講師とも意見交換をする機会を持ちました。
今回のプログラムの最後には、アジア人権文化連帯の事務所を借りて、日本と韓国でそれぞれ2回行われた視察交流プログラムを通じて感じたことや得られたことなどを話し合う場として、日韓メンバー合同の意見交換会を行いました。
意見交換会では、国籍、文化、ルーツが異なる多様な人々が暮らしている社会と化した日本と韓国において、この事業を通じて多様な人々と出会い、学び、感じたことを、移住してきた当事者として、また地域に暮らすコミュニティの一員として、どう具体化し伝えていくかについて話し合いました。また、日本と韓国がホスト社会として、こうした移住者とそのコミュニティのコミットメントにどう対応すべきかについても議論しました。これらの議論は事業の成果物として取りまとめる予定です。
日韓移住者交流事業(助成:公益財団法人 トヨタ財団)の過去のプログラムも、下記のリンクよりご覧ください。
・2018年度韓国視察訪問プログラム(2018年4月25日~29日)
・2018年度日本視察訪問プログラム(2018年8月23日~27日)
・2019年度日本視察訪問プログラム(2019年5月30日~6月2日)