活動報告
5月30日(木)から6月2日(日)にかけて、日韓の移住者交流事業の視察交流プログラムとして、韓国に暮らすアジアからの移住者(ベトナム、フィリピン、ネパール、ミャンマー)と、移住者とそのコミュニティの支援を行っているNGOの関係者、合計6名が日本を訪問しました。
昨年に続き2回目となる日本訪問プログラムでは、外国人住民が集住する地域が現れた韓国の状況を踏まえて、前半では、外国人住民が多い東京・新宿区と静岡県浜松市の学校、外国人コミュニティ等を訪問し、外国ルーツの子どもが多く暮らす地域ならではの教育支援、地域社会に向けた多文化教育などに触れました。後半では、日韓メンバーが「移住者と連帯する全国フォーラム・東京2019」に参加し、韓国側メンバー2人がパネリストとして登壇し韓国の状況を共有する機会をもつとともに、移民・外国人にかかわる多様な人々と出会い、交流を深めることができました。
視察初日となる5月30日は、外国にルーツをもつ児童・生徒が全体の約10%を占める新宿区立牛込仲之小学校を訪問し、授業の様子を見学しました。また、日本語学習が必要な児童・生徒への段階別支援や、地域コミュニティとの協力、外国籍保護者の学校への参画のための学校現場での取り組みについて説明を受けた後に、学校現場の取り組みの成果や課題について活発な意見交換を行いました。
視察2日目は、日系ブラジル人住民が多く暮らし、ベトナムやフィリピンなどアジア出身の住民が増えている浜松市を訪問しました。まず、浜松市による「不就学ゼロ」プロジェクトの取り組みについて話を聞き、教育委員会、学校、行政による協力の成果と課題について議論を行いました。その後の日系ブラジル人住民との昼食懇談会では、移民・外国人コミュニティと地域住民、行政との協力の状況や、課題への取り組みとその成果などについて意見交換を行いました。午後には、外国にルーツをもつ生徒が多く在籍する浜松大平台高等学校と、ブラジル・ペルー人学校の学校法人「ムンド・デ・アレグリア」を訪問し、移民・外国籍の若者の進学・就労支援や、言語・アイデンティティをめぐる課題について様々な角度から議論を行いました。
新宿区立牛込仲之小学校にて | 浜松市多文化共生センターにて | |
浜松大平台高等学校にて | 学校法人「ムンド・デ・アレグリア」にて |
視察3日目の6月1日の午前には、オーバーステイなど非正規滞在の子どもを含む子供の権利をめぐる状況についてRINK(すべての外国人労働者とその家族の人権を守る関西ネットワーク)の草加氏と議論を行いました。その後は、2日の午前まで続く「移住者と連帯する全国フォーラム・東京2019」に参加し、労働、移住女性、多様なルーツ、難民、ヘイトスピーチ・人種差別など日本における移住者を取り巻く状況、制度についての活発な議論に触れるとともに、韓国のメンバーも分科会にてパネリストとして登壇し、韓国の制度や移住者の状況について報告を行いました。また、日本に暮らす移住者当事者や、支援活動家、研究者、学生などと出会い、交流する機会を持ちました。そして、最終日となる6月2日の午前は、1日に続き全国フォーラムに参加し、午後には日韓のメンバーで懇談会を行いました。
RINKの草加氏との意見交換の様子 | 全国フォーラム「移住女性」分科会にて | |
全国フォーラムの交流会にて | 日韓メンバーの昼食懇談会にて |
今回の視察目的の一つの柱が、子どもの教育であったこともあり、多文化化する日本と韓国における外国にルーツをもつ子どもへの対応について議論することが多くありました。その中で、高校・大学への進学や就労までの一連のキャリアプランを描けるように家族と学校だけでなく、行政、地域・移住者コミュニティ等多様なアクターの有機的な連携により行われる必要があり、その過程は母語教育を含むアイデンティティへの配慮が欠かせないことが改めて確認されました。一方で、学校や、移住者コミュニティへの訪問、全国フォーラムへの参加を通じて得られた多様な人々との出会いこそが、この事業が目指してきた学び、交流の広がりを、今後日韓両国の社会に向けてどう生かしていくか、今後の活動を具体化させていくかを考えるうえで、最も重要な財産になることを再確認しました。
資料
日韓移住者交流事業(助成:公益財団法人 トヨタ財団)の過去のプログラムも、下記のリンクよりご覧ください。