活動報告
国際会議 「新たな開発目標の時代とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ ― 強靭で持続可能な保健システムの構築を目指して ―」
日本国際交流センター(JCIE)は12月16日、外務省、財務省、厚生労働省、JICAとの共催で、国際会議「新たな開発目標の時代とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:強靭で持続可能な保健システムの構築を目指して」を東京で開催しました。
本会議は、国際社会の新しい開発目標「持続可能な開発アジェンダ2030」が9月に採択されて以来初めて開かれる保健分野の大規模な国際会議として世界から注目を集め、安倍晋三内閣総理大臣、マーガレット・チャン世界保健機関(WHO)事務局長、ジム・キム世界銀行総裁、ビル・ゲイツ・ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同議長、武見敬三参議院議員/JCIEシニアフェローが開会セッションで講演したほか、国内外の政府関係者や国際機関の代表、研究者、民間財団、市民社会の代表など約300名が一堂に会し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)という概念や政策が、新しい開発目標へ移行する過程で、また公衆衛生危機への対応と備えを強化する上でどのような役割を果たせるかを議論しました。日本は2016年にはG7議長国となり、5月にG7伊勢志摩サミット、9月にG7神戸保健大臣会合が開催され、また、初めてアフリカの地で開催されるアフリカ開発会議(TICAD)も同年に開催される予定です。本会議は、こうした重要な会合に向けて、日本がグローバルヘルス分野でリーダーシップを発揮する上で大きな布石を打つ機会となりました。
会議の報告書(英文)と議論の概要は以下のとおりです。
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会議概要
日本は、外交政策の柱のひとつである人間の安全保障の概念普及への具体的手段として、国内外でユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の促進を実施・支援してきており、世界各国によるUHC達成への支援、ならびに、他国によるUHC達成支援を促進するよう、常に政治的関心を高める努力を続けてきた。本会議の開会にあたり安倍総理大臣は、G7伊勢志摩サミットにおいて、保健を優先課題として取り上げ、国際的な議論に主導的な役割を果たしていく意思を表明した。また、「人間の安全保障」の考えに立ち、保健を含む世界規模の課題の解決により重要な役割を果たすことが「積極的平和主義」政策を実践することになると強調した。
開会セッションにおけるグローバル・リーダーシップ・アドレス講演で、チャンWHO事務局長はUHCへの力強い支持を表明し、UHCは「公平な社会を実現する最も強力な政策オプションである」と述べた。ジム・ヨン・キム世銀総裁は、マーティン・ルーサー・キングJr.の言葉「私たちは緊急性に直面している。もはや無関心や自己満足に浸っている時間などない」を引用し、「すべての人に健康を」というイニシアティブが謳われたアルマアタ宣言を今こそ実現しなければならない、と各国の行動を促した。
基調講演にたったビル・ゲイツ・ゲイツ財団共同議長は、多くの命を救い生活を向上させる歴史的瞬間が今訪れているとし、MDGsからSDGsへの移行期にG7議長国になる日本には、引き続きグローバルファンド, GHIT, GAVI, ポリオ、マラリア根絶など、終わっていない課題への支援を期待したい、そこには何百万人もの命がかかっている、と述べた。
武見参議院議員 → 動画(YouTube) |
チャンWHO事務局長 → スピーチ全文 | 動画(YouTube) |
キム世界銀行総裁 → スピーチ全文 | 動画(YouTube) |
ゲイツ・ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同議長 → 動画(YouTube) |
セッション1と2では、特定の疾病に特化していたミレニアム開発目標の時代から、より広範で互いに関連する開発目標を掲げるSDGs (持続可能な開発目標)へシフトしていく中、また、昨今のエボラ出血熱の流行で露呈された脆弱な保健システムの影響が残る中で、実際にUHCを実施していく際に直面する課題は何か、各国がUHCをどのように推進し課題を克服しつつあるかという経験が議論された。
テドロス・エチオピア外相(左)、ワシントン大学マレー教授(右) |
ディティウ・ストップ結核パートナーシップ事務局長(左)チョウドリーBRAC会長(右) |
ランチセッションでは、塩崎恭久厚生労働大臣、ピヤサコン・タイ保健大臣が基調講演を行った。塩崎大臣からは、公衆衛生危機に対応するWHOの基金への拠出を行う考えが示された。後半のGHITによるセッションでは、保健アクセス改善の触媒としてイノベーションが果たす重要な役割について議論された。
午後のセッション3では、国境なき医師団やWHO、世界銀行等のさまざまな機関の立場から、また、来年1月に米国医学アカデミーにより報告書が発表されるグローバルヘルスのリスク・アセスメント等の観点から、将来の公衆衛生危機の負の影響を最小限に食い止めるためのグローバル・ヘルス・ガバナンスの改革についての議論を掘り下げた。
セッション4では、来るべきG7伊勢志摩サミットにおける日本の果たすべき役割に焦点を当て、武見敬三委員長の下、分野横断的に自由闊達な官民学連携の研究協力を行っている「2016年G7に向けたグローバルヘルス・ワーキンググループ」による政策提言案が発表された。
最終セッションでは、ランセット誌のリチャード・ホートン編集長が議論の総括を行い、G7の主導により各国がUHCの評価やモニタリングを通じて説明責任を確保することの重要性を指摘した。閉会挨拶で、長嶺外務審議官は、会議参加者への感謝とともに、本会議の議論を今後のG7保健分野の議論に活かしていきたいと述べ会議を締めくくった。
インタビュー(YouTube)
- 塩崎 恭久 厚生労働大臣
- テドロス・アダノム・ゲブレェサス エチオピア連邦民主共和国外務大臣
- アリエル・パブロ・メンデス グローバルヘルスと母子保健次局長、米国開発庁
- セス・バークレー GAVIワクチン・アライアンスCEO
- マーク・ダイブル 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)事務局長
プログラム
■ 開会セッション | |
開会挨拶: | |
安倍 晋三 | 内閣総理大臣 |
会議主旨: | |
武見 敬三
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参議院議員、2016年G7に向けたグローバルヘルス・ワーキンググループ委員長、(公財)日本国際交流センターシニアフェロー |
グローバル・リーダーシップ・アドレス: | |
マーガレット・チャン | 世界保健機関(WHO)事務局長 |
ジム・ヨン・キム | 世界銀行総裁 |
基調講演: | |
ビル・ゲイツ | ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同議長 |
モデレーター: | |
北岡 伸一 | (独法)国際協力機構理事長 |
大河原 昭夫 | (公財)日本国際交流センター理事長 |
■ セッション1:開発をめぐる国際環境の変化における健康 ―課題と可能性の再定義― (パネル・ディスカッション) |
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モデレーター: | |
ピーター・ピオット | ロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長 |
冒頭発言: | |
ババトゥンデ・ オショティメイン |
国連人口基金(UNFPA)事務局長
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パネル: | |
クリストファー・マレー | ワシントン大学グローバルヘルス教授、保健指標評価研究所(IHME)所長 |
スリナート・レディ | インド公衆衛生財団理事長 |
デイビッド・ヘイマン | 王立国際問題研究所シニア・フェロー、英国公衆衛生サービス理事長 |
テドロス・アダノム・ ゲブレェサス |
エチオピア連邦民主共和国外務大臣
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マーク・ダイブル | 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)事務局長 |
■ セッション2:各国における強靭で公平なUHC実現に向けた戦略 | |
モデレーター: | |
アン・ミルズ | ロンドン大学衛生熱帯医学大学院保健医療・政策教授 |
パネル: | |
ジェームス・ワイナイナ・ マチャリア |
ケニア保健長官
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ムシュタク・チョウドリー |
バングラデシュ農村向上委員会(BRAC)副会長 |
橋本 英樹
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東京大学大学院医学系研究科保健社会行動学教室教授、2016年G7に向けたグローバルヘルス・ワーキンググループ副総括 |
ルチカ・ディティウ | ストップ結核パートナーシップ事務局長 |
セス・バークレー | GAVIワクチン・アライアンスCEO |
戸田 隆夫 | (独法)国際協力機構人間開発部長 |
■ ランチセッション | |
モデレーター: | |
ピーター・ピオット | ロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長 |
第1部 UHCを達成する上での保健政策上の課題 | |
基調講演: | |
塩崎 恭久 | 厚生労働大臣 |
ピヤサコン・ サコンサタヤドーン |
タイ保健大臣
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第2部 保健アクセス改善の触媒としてのイノベーション ―日本のR&DフラッグシップとしてのGHIT― |
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開会挨拶: | |
BTスリングスビー | グローバルヘルス技術振興基金CEO兼 専務理事 |
パネル: | |
タチ・ヤマダ | フレイジア・ヘルスケア・パートナー ベンチャー・パートナー |
ピーター・ピオット | ロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長 |
セッション閉会挨拶: | |
黒川 清
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(公社)グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)代表理事・会長、政策研究大学院大学客員教授、(特活)日本医療政策機構代表理事 |
■ セッション3:グローバル・ヘルス・ガバナンス再考:公衆衛生危機対応と強靭な保健システム構築とをいかに繋ぐか | |
モデレーター: | |
マイケル・ライシュ | ハーバード大学公衆衛生T.H.チャン大学院国際保健政策武見太郎教授 |
パネル: | |
イローナ・キックブッシュ | 国際・開発高等研究所所長 |
ビクター・ツァウ | 米国医学アカデミー会長 |
バート・ジャンセン | 国境なき医師団(MSF)オペレーション・センター・ブリュッセル オぺレーション部長 |
マリー・ポール・ キーニー |
WHO事務局長補(保健システム・イノベーション担当)
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ティモシー・エヴァンス | 世界銀行保健・栄養・人口グローバル・プラクティス担当シニア・ディレクター |
■ セッション4:グローバルヘルスの課題に対する効果的で革新的な対応とG7の役割 | |
モデレーター: | |
リンカーン・チェン | 米国中国医学基金会理事長 |
パネル: | |
ムスタファ・シディキ・ カロコ |
アフリカ連合(AU)社会問題担当委員
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渋谷 健司
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東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授、2016年G7に向けたグローバルヘルス・ワーキンググループ総括[G7への政策提言案発表] |
サイモン・ライト | セーブ・ザ・チルドレン子どもの命を守る政策・アドボカシー担当局長 |
マーク・ピアーソン | 経済協力開発機構(OECD)雇用・労働社会問題局次長 |
ハンス・ぺーター・ バウア |
ドイツ連邦経済協力開発省次局長
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■ 閉会セッション | |
リチャード・ホートン | ランセット誌編集長[会議総括] |
長嶺 安政 | 外務審議官(経済) |
■ レセプション | |
国際会議「新たな開発目標の時代とユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」および「グローバルファンド増資準備会合」合同レセプション | |
主催:外務省、世界エイズ・結核・マラリア対策基金、日本国際交流センター/グローバルファンド日本委員会 |