活動報告
2023年1月13日から15日にかけて、日英21世紀委員会第39回合同会議が、英国ロンドンおよびノリッジ・イーストアングリア大学で開催されました。
今回の合同会議では、「日英両国の政治・経済状況」、「グローバルヘルス-パンデミックの教訓」、「日英両国における安全保障の課題」、「経済安全保障とサプライチェーン」、「国際開発協力の展望-グローバル・サウスの統合」について討議が行われました。
イーストアングリア大学での合同会議に先立ち、ロンドンにおいてスナク首相表敬訪問(クレバリー外務・英連邦・開発大臣同席)、ジャパン・ソサエティ及び在英日本商工会議所共催昼食会、外務連邦省主催レセプション、松浦博司、駐英日本国特命全権公使主催夕食会が開催されました。
本会議のステートメント(提言)、詳細プログラム及び参加者は以下のとおりです。
【第39回合同会議討議概要】
セッション1:日英両国の政治・経済の最新動向
2022年3月の前回会議以降、大きな変化を遂げている英国政治は、今後、スナク首相が掲げた5つの目標:経済成長、インフレ率の半減、国債の削減、国民医療サービス(NHS)の待機リスト(waiting list)の削減、不法移民の削減をどこまで実行できるかが注目されており、2024年末までに実施予定の総選挙での結果にかかわらず、次期新政権はBrexitが引き起こした問題、さらには(現状では可能性は低いものの)スコットランド独立に関する2回目の国民投票への対応を迫られることになるとの報告がされました。日本の政権に関する見通し、および想定しうるシナリオについても議論されました。現政権は、日本がよりイノベーション力を高め、スタートアップを推進し、デジタル化を取り入れていく必要があると認識しており、また、日本の有権者は主に、政府が経済運営とインフレ問題に対処することを望んでいるが、同時に、対外安全保障上の脅威という問題も存在することも認識しているとが報告されました。
セッション2: グローバルヘルス-パンデミックの教訓
両国におけるCOVID-19の影響や将来への教訓など、グローバルヘルスに関する課題について議論されました。パンデミックで表面化した両国における成功例や問題点が報告され、将来に向けての日英協力、また、開発途上国へのワクチン提供も効率的に機能しなかったこと、AMR(薬剤耐性)に関する議論の継続の必要性、情報管理の必要性など世界的な対応への課題について意見が述べられました。
セッション3:日英両国における安全保障に関する課題
2022年2月に勃発したロシアのウクライナ侵攻以降の様々な事象を振り返りました。日英両国政府もロシアに対して一貫して強固な政治的姿勢をとり、党派を超えた支持を得ており、引き続き世界の民主主義国家が連携してウクライナを無条件で支持していく必要があること、また善良な統治国家が内外から脅威に晒された場合のレジリエンスが重要である、という点で意見が一致しました。また、法の支配と自由市場の原則に対する脅威が高まっている点、サイバー攻撃にも言及されました。
セッション4: 経済安全保障とサプライチェーン
グローバルな市場が経済安全保障の維持に役立つという従来の考え方はもはや有効ではなく、経済安全保障上の脅威を理解し、対応するためには、脅威の複雑度に応じて様々なレベル(二国間、国連、G20、G7)で様々なアプローチを選択する必要があります。また、地政学的、自然災害、マクロ経済などのグローバルリスク、グローバルガバナンス体制の改革や、自動化/AI活用など産業生産性向上のための新たなアプローチの必要性についても議論されました。
セッション5: 国際開発協力の展望-グローバルサウスの統合
海外開発における日英協力の実際的展望について、英国側メンバーが委託した、NGO「Development Reimagined」からの報告書をもとに討議が行われました。報告書では、援助支出と優先度の分析、将来的な補完的支援の優先分野、開発パートナーとしての国別 SWOT 分析などが示されており、日英の重複する優先分野として、安全保障と技術、人道支援、気候変動とグリーンリカバリー、インフラ、保健という5分野が挙げられました。この報告の他、従来型ODAの課題、日本の「開発協力大綱」改革の現状、社会変革・不平等の是正・雇用促進・経済回復の支援における民間投資の役割についても討議されました。日英両国はODA主要国であり、多国間機構において主導的役割を果たす立場にあり、国際貿易や気候変動などその他の政策分野と開発事業を連携させる重要性についても意見が述べられました。