活動報告
日本国際交流センター(JCIE)では、公益財団法人トヨタ財団の助成を得て、「越境的移動における情報保障の社会基盤―公正で安定した移住の実現に向けて」を実施しています。
2022年10月24日に、移住労働者の受入れ国である日本、韓国の関係者、送出し国であるネパール、ミャンマーの現地メンバー及び日本、韓国の移住者コミュニティメンバーが集まり、プロジェクト全体会議をオンラインにて開催しました。
今回の全体会議では、受入れ国と送り出し国における国境を超える人の移動、とりわけ労働移住の再開が急激に進んでいることを受けて、コロナ禍における各国の状況を再確認し、今後の動き、展望を考える機会となりました。
受入れ国である日本と韓国からは、コロナ禍で労働力の受入れが停止していたため新たな働き手の確保ができなかったことや、水際対策の緩和措置が労働力の新規入国・再入国の再開からスタートしているという共通した状況が説明されました。また、日韓の共通した課題である人口減少や、地方の若年層の流出等に対応するための働き手確保、生産年齢人口対策として、韓国の季節労働者の受入れ拡充と「地方特化型ビザ」制度導入の検討状況、日本の特定技能制度や技能実習制度の見直しの検討状況が報告されました。
また、日韓で活動するミャンマーとネパールのコミュニティからは送り出し国からの労働移住者の状況が報告されました。日本では在留資格「特定技能」に基づく新規入国が増加している中、支援を担うべき機関が適切な支援を行っていないこともあり、入国者に対する生活・就労に関わる様々な相談が寄せられていることが紹介されました。韓国では再雇用を巡って政府などの制度運用を担う公的機関から情報提供や雇用・労働をめぐる支援が当事者に届いておらず、各コミュニティが担わざるを得なかったことが報告されました。
一方、ネパール現地では、受入れ国による新制度の運用拡大が進む一方で、送出し国での政府等による送り出しシステムの整備・構築は進められていない中、労働移住を巡る民間ブローカーによる誤った情報の広がりや不法なあっせん等の仲介による被害が多くなっていることが指摘されました。
最後に、日本と韓国両国においてコロナ禍でほぼ停止していた働き手の確保のための動きが、制度拡大を含め積極的な外国人受け入れの動きとして現れているものの、実際の労働移住の動きは送り出しと受入れのプロセスにおける情報提供、支援、フォローアップ体制が整っていない状況により、長年続いている「脆弱な労働移住」の問題の改善が図られていないとの指摘がありました。そのような状況においては、労働移住者及び労働移住希望者に対して移動する前と後において正確で信頼できる情報が得られるかいないかが重要で、長年続いている課題を改善、解決していくために、どのような戦略と方法論が考えられ、それをアクションプランとしてどうまとめていくべきかについて継続的に議論していく必要があることが共有されました。