活動報告
日本国際交流センター(JCIE)は、「アジア健康構想」(Asia Health and Wellbeing Initiative: AHWIN)の事業の一環として、8月29日にパシフィコ横浜展示ホールにて、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)公式サイドイベント『アフリカの人口高齢化を見据えて-高齢者ケアの「今」と、大陸を越えて共有すべきケアのあり方-』を開催しました。本イベントは「東アフリカにおける未来の人口高齢化を見据えた福祉とケア空間の学際的探究」科学研究費助成事業プロジェクトチーム、東アジア・ASEAN経済研究センターおよび長崎大学との共催、また、国立社会保障・人口問題研究所の後援のもと行われました。日本やアフリカ諸国をはじめとする世界各国の政府、国際機関、大学・研究機関、NGOなどから100名以上の方に参加いただき、保健、社会保障、介護・福祉に焦点を当て、アフリカの人口高齢化と高齢者ケアの展望について議論しました。
本サイドイベントの基調講演では、アフリカからはセネガル共和国国務大臣であり、過去に保健大臣を務めたアワ・マリ・コルセック大臣と、国際NGOヘルプエイジ・インターナショナルのアフリカ地域ディレクターを務めるプラフラ・ミシュラ氏が登壇し、アフリカの高齢者が置かれている状況と年金制度の策定等早急な対策の必要性について指摘しました。また、地域は異なるもののアジアにて人口高齢化に直面し始めているインドネシアからは国家開発企画庁のマリキ氏が同国政府の取り組みについて発表しました。長崎大学の増田研氏はフィールドワークを通じ、現地で起きていることを社会の脈絡の中で理解し、国家や行政の政策にどのように反映できるか考察する文化人類学者としてのアプローチを話しました。
続くパネルディスカッションでは高齢者ケア、とりわけ介護の課題がトピックとして挙がりました。日本では介護保険制度により高齢者を社会全体で支えるシステムが導入されましたが、インドネシアを含むほとんどのアジア諸国、およびアフリカでは同様の制度は未だ確立していないのが実状です。多くの地域において家族や親族が高齢者の面倒を見ることが主流で、社会の中で当然とみられています。しかしながら、増加する高齢者数に対応するには家族だけでは支えられなくなり、将来的には行政や地域を通じて組織的に支える必要がある等の議論が交わされました。多様な人種・民族を抱えるアフリカ大陸では家族の形も様々で、各地に根付く伝統や社会規範もあり、共通の解決策があるとは限りませんが、だからこそ日本やアジアから学び合い解決すべき課題を洗い出し、包括的にアプローチする重要性が指摘されました。本サイドイベントが、様々な国の政策、社会的背景、地域社会での取り組みをお互いに学び合い、それぞれの国の文脈に沿った高齢者ケアを考えるきっかけになってほしいというメッセージで会は締めくくられました。
イベントの記録動画全編をJCIEのYouTubeチャンネル「JCIE Global Studio」に掲載しましたので、是非ご覧ください。
また、当日の様子がNHK NEWS WEBに掲載されておりますのでぜひご覧ください:『高齢化忍び寄るアフリカ 介護問題への対策が喫緊の課題』
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プログラム
◆開会挨拶
大河原 昭夫 (公財)日本国際交流センター理事長 (スピーチ全文)
◆特別挨拶
ナタリア・カネム 国連人口基金事務局長 (スピーチ全文)
◆講演
アワ・マリ・コルセック セネガルCN-ITIE理事長、元セネガル保健大臣 (発表)
プラフラ・ミシュラ ヘルプエイジ・インターナショナル、アフリカ地域ディレクター (発表)
マリキ インドネシア国家開発企画庁(BAPPENAS)、人口計画・社会保障局ディレクター (発表)
増田 研 長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科 准教授 (発表)
◆パネルディスカッション
林 玲子 国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部長(モデレーター)
◆閉会挨拶
駒澤 大佐 東アジア・ASEAN経済研究センター 総長参与
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