活動報告
日本国際交流センター(JCIE)は東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)との共同でアジア健康構想の英文ウェブサイトを公開しました。本ウェブサイトはアジア地域の人口高齢化、高齢者ケアに焦点を当て、アジア各国が直面している課題や得られた教訓を共有し、アジア地域全体として対応していくための情報共有プラットフォームの役割を担っています。
コンテンツの内容は以下の通りです。
アジアの高齢化の現状を示すインフォグラフィック
アジア地域における人口高齢化の状況を、インフォグラフィックにして示しています。
アジア地域で急速に進展する人口高齢化を示す統計値や、健康余命や認知症人口の将来予測、老年人口指数など、人口高齢化に関連する情報をインフォグラフィック形式で提供しています。また、ERIA直轄の高齢化に関連する研究プロジェクトの一つである、Demand and Supply of Long-Term Care for Older Persons in Asia(アジアにおける高齢者ケアの需要と供給に関する研究)[研究代表者:林玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部長)]で得られた知見から、アジア各国の県レベルにおける高齢化率や独居高齢者割合を見ることもできます。
各国の高齢化に関する政策的対応の共有
ウェブサイト公開にあたり、一般社団法人医療介護福祉政策研究フォーラムの中村秀一 理事長による寄稿文「Japan’s Welfare for the Elderly: Past, Present, and Future(日本の高齢者福祉の変遷と現状、展望)」を掲載しています。日本が実施してきた高齢者福祉政策の変遷とその反省点を振り返りながら、介護保険制度創設の背景やその意義、そこから地域包括ケアシステムに至る経緯について論述しています。今後、アジアの教訓も追加していく予定です。
アジア各国で実施されている革新的な高齢者ケアの事例記事
人口高齢化により生じる様々な課題に対して、革新的な技術やアイディアを用いて課題に取り組んでいる事例を、「Community-Based Initiatives(地域全体で高齢者の健康を支える取り組みをしている事例)」「Support Self-Reliance(自立支援に資する介護等、高齢者の心身機能の維持・向上に寄与する事例)」「Technology & Innovation(高齢者ケアの効率化・高度化をかなえる事例)」の3つのカテゴリーに分類して紹介しています。ウェブサイト公開にあたり、日本での先進的な取り組み5事例を紹介しています。
Community-Based Initiatives(地域全体で高齢者の健康を支える取り組みをしている事例)
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A Community-Based Approach Combining Physical and Mental Exercise to Prevent Dementia
国立長寿医療研究センターが実施した研究により科学的に効果が証明された取り組みで、認知課題と運動の組み合わせ次第で様々な実施方法を考案出来るため、地域住民の認知機能や身体機能に合わせた展開が可能となっています。取材した高齢者クラブは皆さんとても楽しそうに取り組んでおられ、笑い声が絶えないクラブ活動になっていました。→ 詳細はこちら
Support Self-Reliance(自立支援に資する介護等、高齢者の心身機能の維持・向上に寄与する事例)
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An Eldercare Facility that Helps Seniors Resume Independent Living
社会福祉法人正吉福祉会 杜の風・上原では施設利用者が自分自身で日常生活の活動を送ることを目指して、排泄機能・身体機能・覚醒状態に焦点を当てて機能改善に向けた取り組みを行っています。取材時、施設を利用されている方々がご自身の機能改善に対して積極的に取り組んでおられたのが印象的でした。→ 詳細はこちら
Technology & Innovation(高齢者ケアの効率化・高度化をかなえる事例)
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Improving the Health of Caregivers and Seniors by Promoting Safer Transfer Techniques
日本ノ―リフト協会が提唱する介護技術のコンセプトで、介護動作を三次元動作解析装置により分析するなど科学的に裏付けしているとともに、人力だけでなく適切に福祉用具を用いることで、介護者の腰痛を予防することを目指しています。→ 詳細はこちら
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Innovative ICT Device Helps Seniors Control Bladder Function
トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社が開発した、世界で初めてICTを用いて排尿を予測する機器であるD Freeを紹介している記事です。これまでオムツという対症療法が主流であった排尿障害対策が、D Freeによる予測により失禁を予防して高齢者の自立を促すことができるという、大きな可能性を取材時に感じました。→ 詳細はこちら
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Using ICT for Early Detection of Health Abnormalities
芙蓉グループが開発した安診ネットは毎日測定する高齢者のバイタルサインデータをAIで解析し、高齢者一人一人に対してバイタルサインの基準値を算出することで、テーラーメイド型の健康管理を可能にしています。取材先の介護士の方は利用者の体調管理に対する心理的な負担が軽減したと話していました。→ 詳細はこちら
AHWIN プロジェクト
AHWINの下で進められているアジア高齢化分野の研究プロジェクトの概要や開催された国際会議の情報を掲載しています。
人口高齢化は人類の長寿化が達成された成果ではあるものの、高齢者ケアへの需要が急速に増加し、財政的負担も大きくなるなどの課題が新たに生じてきており、アジア地域全体として対応していく必要があります。
今後も、アジア各国からの情報を掲載していくことで、情報共有プラットフォームとしての本ウェブサイトの機能を拡充していきます。