活動報告
ACTアクセラレーター(Access to COVID-19 Tools (ACT) Accelerator)(以下、ACT-A)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を収束させる上で決め手となる検査、治療、ワクチンの3つの医療ツールの開発、生産を加速化し、低・中所得国への公平なアクセスを実現させるための国際協働の枠組みです。G20の提唱に基づき、各国政府と世界保健機関(WHO)を初めとする国際機関や民間財団などによって2020年4月に立ち上げられました。日本国際交流センター(JCIE)は、2021年4月より、PDF版ニュースレター「ACT-A WATCH 新型コロナとたたかう国際協働のいま」を発行し、加えて同年10月より、同名の特設ウェブサイト(2023年7月末を以って公開終了)を開設し、ACT-Aの情報を日本語で発信してきました。
ACT-A WATCH NEWS記事(JCIE作成)
以下は、特設ウェブサイト「ACT-A WATCH 新型コロナとたたかう国際協働のいま」に掲載されていた記事をPDF化したアーカイブです。
- COVID-19とどう向き合ったか、専門家に聞く/今後の感染症対策で多くの教訓
- WHO、COVID-19をめぐる緊急事態宣言の終了を宣言 約3年3ヶ月ぶり
- ACT-Aの移行計画が開始 高リスク下にある集団へのワクチン接種やCOVID-19対応ツールへの持続的なアクセス確保などに重点
- ACT-Aの外部評価を公表 おおむね高評価の一方、今後の教訓も
- パンデミックの終息に向け、3つのギャップ克服を グテーレス国連事務総長
- 最もリスクの高い人々のための検査と治療へのアクセスがカギ ACT-A分科会が報告書
- ACT-Aの各分野、多くの国で目標からいまなお遠く
- G7サミット、COVID-19対策を議論 パンデミックに備える新たな金融仲介基金の設立を支持
- 治療部門の現状や課題を発表/ユニットエイド
- 日本政府がGaviに資金拠出を表明/ワクチンの開発や供給を後押し
- IMFのワーキングペーパー「新型コロナの長期にわたるリスクを管理するためのグローバル戦略」発表
- ワクチン接種の目標、再考を/重症化リスクが高い人を優先に
- 「ワクチン開発を100日で」CEPIが新目標 35億ドルの資金を国際社会に呼びかけ
- 国際社会はワクチンの不平等から何を学んだのか ゲイツ財団らがオンラインイベント開催
- アフリカ6カ国にmRNAワクチン技術移転へ WHO発表
- ACT-A資金調達キャンペーンテドロス事務局長の冒頭挨拶(抄訳)
- ACT-A、230億ドルの資金調達を呼びかけ 各国に「公平な分担」目標を設定
- COVAX、10億本目の供給を達成/Gavi理事会議長「低所得国の接種の加速化を」
- 医療従事者には喝采ではなく、構造的な支援を ある医師の訴え
- 保健医療の逼迫・崩壊は、HIVやマラリア、母子保健などにも
- WHO、パンデミック条約策定に向けた協議機関設置へ
- アフリカでは、感染者7人のうち6人が未検出か
- 計画的な供給などを要請 アフリカ向けワクチン寄付で共同声明
- ワクチン接種の9月末目標、56カ国が達成できず/WHO事務局長「恐ろしい不平等」
- ワクチン接種の目標達成、アフリカは5カ国/注射器不足も背景に
- 今後1年間の『戦略的な計画と予算』を発表 不平等の解消を最優先に
- ACT-Aの中間報告書まとまる 目標達成に向けた改善策などを提案
- 『ACT-A WATCH』専用ウェブサイト、ツイッター開設のお知らせ
- バングラデシュの底力を証明:わずか1日で310万人にワクチン接種
- 新型コロナ・サミット:米国が国連総会にあわせて主催
- 「縁の下の力持ち」個人防護具 にイノベーションを
- 高所得国と低所得国の明暗分かれる
- デルタ株による感染急拡大で緊急要請
- 国際機関トップが共同書簡
- ワクチンの自前生産に向けて立ち上がるアフリカ
- 「フェアシェア(公平な分担)モデル」公表 目標額未達の国多く
- 2021年6月2日「ワクチンサミット」開催
- ACT-A発足1周年の節目、立ちはだかる課題も
- 世界に対する日本の貢献と日本への期待
ACT-A WATCH PDFニュースレター(JCIE作成)
JCIEでは、PDFファイルで日本語のニュースレターを発行し、メールマガジン形式で定期的に情報発信を行いました(大部分の記事は上記ウェブサイトに掲載したものと共通です)。
ACT-Aとは?
ACT-A立ち上げの経緯と目的
2019年12月に初めて症例が報告されて以降、瞬く間に世界を席巻した新型コロナウイルス。世界保健機関(WHO)は2020年1月に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。3月には新型コロナウイルスに関するG20首脳テレビ会議が、議長国のサウジアラビアの呼びかけで開かれ、国際的な協力による早急な取り組みの必要性が首脳声明に盛り込まれました。これを受けてWHOは4月24日、保健分野に関わる国際機関や欧州連合(EU)、フランス、民間財団などを発足メンバーとして、Access to COVID-19 Tools Accelerator(新型コロナウイルス感染症に関連する手段<ツール>へのアクセスを加速化する枠組み)を立ち上げました。
頭文字を取ってACT(アクト)アクセラレーター(ACT-A)と呼ばれる新しい枠組みは、二つの大きな目的を掲げています。一つは、検査や治療薬、ワクチンなどの開発・生産を急ぐことです。もう一つは、これらの配布や普及にあたって、国の経済力などによって不公平・不平等が生じないような仕組み作りです。このため政府、企業、市民などが分け隔てなく参画し、資金や技術、知見などあらゆる面での協力を進めていくことが求められています。背景には、グローバル時代においては、一人でも感染の危険性があれば、すべての人が安全とは言えない(”No one is safe until everyone is safe.”)、言い換えれば、すべての人の感染リスクがなくなって初めて、感染拡大を防ぐことができるという現実があります。これは、誰一人として取り残してはいけない(SDGsのキャッチフレーズ “No one will be left behind.”)という考え方にも通ずるものです。(COMMITMENT and CALL TO ACTION参照)。
ACT-Aの組織体制
ACT-Aは、COVID-19に対応するため、グローバルヘルス分野の国際組織が連携する国際協働の仕組みです。新たにACT-Aという組織が設立されたわけではなく、既存の組織が緩やかに連携することで、それぞれの組織が持つ知見やネットワークを活用し、パンデミックの危機に迅速に対応することが可能になっています。三つの部門「ワクチン」「検査」「治療」、そしてその下支えとなる「保健システム」で 構成され、それぞれの分野で専門性を持つ国際機関や民間財団が主管組織として運営の責任を持っています(以下表の8組織に国連児童基金(ユニセフ)およびビル&メリンダ・ゲイツ財団を加えた10組織がACT-A Convening Partners) 。また全体のガバナンスを担う組織として運営理事会(ファシリテーション・カウンシル)が置かれ、日本は発足当初より、フランス、英国、ドイツ、ノルウェー、南アフリカなどとともにメンバーとなっています。
■ACT-Aの各部門と主管組織とパートナー
ワクチン部門(COVAX) |
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検査部門 |
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治療部門 | ||
保健システム |
ワクチン部門は、「 新型コロナウイルス感染症ワクチンの国際的なアクセス」(Covid-19 Vaccines GlobalAccess、COVAX)とも呼ばれ、安全かつ効果的な承認済みワクチンを調達し、90を超える低・中所得国を中心に公平に分配することを目指しています。発足時から2023年3月末までに、146カ国に約20億回分のワクチンを供給しました。主管組織に加えて、ポリオなどワクチンの供給や接種などを長年担ってきた国連児童基金(ユニセフ)が、配給のパートナーとなっています。
検査部門は、安価で迅速に精度の高い結果が分かる診断薬や検査キットの開発を進めるとともに、低・中所得国に公平に分配し検査を大規模に拡大する事を目指しています。2023年3月末までに、180カ国を超える国々地、約2億回分の検査を提供し(加えて、グローバルファンドのC19RMで約10億ドルの支援)、低・中所得国の検査率を上げることに貢献しました。
治療部門は、効果的な治療や予防に向けた高度な研究を進める一方で、酸素療法関連製品の提供や、科学的に効果が証明された治療薬の供給を低・中所得国に向けて行いました。2023年3月末までに、約3000万ドル分(加えて、グローバルファンドのC19RMで約2億6千万ドル分)の治療薬を調達、また、約4億ドル分(加えて、グローバルファンドのC19RMで約6億ドル分)の医療用酸素を調達しました。
保健システム部門は、Health Systems & Response Connector(保健システム・対応コネクター)と呼ばれ、保健システム強化や、医療従事者のための個人防護具(PPE)の調達などを担いました。約9億4000万ドル分(加えて、グローバルファンドのC19RMで約7億6000万ドル分)の個人用防護具(PPE)を調達しました。主管組織の一つである世界銀行に置かれているグローバル・パートナーシップであるGloabal Financing Facility (GFF)、そして、国連児童基金(ユニセフ)が協力して活動しています。
(参考)
Moon S, Armstrong J, Hutler B, et al. Governing the Access to COVID-19 Tools Accelerator: towards greater participation, transparency, and accountability. Lancet. 2022 Jan 29;399(10323):487-494. doi: 10.1016/S0140-6736(21)02344-8.
Figure 2 参照
ACT-Aの予算と資金調達
世界保健機関(WHO)ACT-A資金コミットメントトラッカーより、国別のACT-Aの各部門・各機関への拠出誓約額(各国の拠出額については条件・注釈等があります)、フェアシェア(公平な分担)に対する各国の誓約率、ワクチン現物寄贈の状況などについて、最新のデータが記載されたExcelファイルおよびPowerPointスライドにまとめられたサマリーをダウンロードしてご覧になれます。
関連サイト (英文)
ACT-A関連の主なウェブサイトへのリンクです(主要なもののみを取り上げており、網羅的なものではありません)。
- The Access to COVID-19 Tools (ACT) Accelerator WHOによるACT-A公式ウェブサイト
- ACT-Accelerator Website: Global Equitable Access to COVID-19 Tests, Vaccines, Treatments ACT-Aの活動や実績を豊富な写真と共に紹介する新公式ウェブサイト
- Facilitation Council for the Access to COVID-19 Tools (ACT) Accelerator これまでのACT-A運営理事会(ファシリテーション・カウンシル)の録画や資料をご覧になれます。
- Coronavirus disease (COVID-19) pandemic WHOの新型コロナウイルス感染症特設サイト。WHOの定例記者会見の動画のライブ配信や過去の会見の録画もご覧になれます。
- Global COVID-19 Access Tracker ACT-Aの各部門のこれまでの実績をインタラクティブ・マップで分かりやすく紹介する、ACT-A事務局が運営するウェブサイト
- @ACTAccelerator ACT-A事務局の、SNS X(旧Twitter)公式アカウント
- その他のACT-A関連の公式報告書・出版物等はこちらからご覧になれます。