活動報告

日本国際交流センター(JCIE)では、東京大学未来ビジョン研究センターとの協力の下、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の国際秩序の在り方、それを実現するために必要な国際的協力体制やルールの在り方、及び日本が果たすべき役割について、情報収集・調査研究、外国シンクタンク・有識者等との討論、対外発信・政策提言等を行うことを目的とし、2021年度の単年度事業としてグローバルヘルス・ガバナンス(GHG)研究会を実施しました。

 

日本は近年、経済成長に先立ち国民皆保険制度を導入した自国の経験に基づき、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の主流化、UHCと感染症危機管理体制構築を包含する政策概念の提示等、国際的なグローバルヘルスの議論を主導しつつ、国際協力においても実績を積んできました。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行を受けて、日本がグローバルヘルスにコミットする根拠となってきた自国制度・体制・技術の優位性に揺らぎが生じています。今後も日本が、「人間の安全保障」を外交の柱の一つに掲げる国として、グローバルヘルスにおいて引き続きリーダーシップを発揮するためには、自国の制度改革や能力強化(研究開発分野含む)を通じた自国民の健康を守る健康安全保障と、G7、G20、国際機関、市民社会組織(CSO)との連携を通じた国際協調主義に基づく世界の安全保障を、両者の好循環が実現される形で高めていくことが求められます。

 

本事業では、大きく変化を遂げているグローバル及びリージョナルなヘルス・ガバナンスの体系・構造的な分析に加え、健康危機対応、研究技術開発協力、健康の社会・経済・環境的決定要因やOne Health、公平なアクセスを担保する官民連携、COVID-19の経験を踏まえたUHC戦略の政策枠組み、クルーズ船を含む外国船舶における感染症事案への対応等、個別テーマを取り上げることで、国家の安全保障との連続性を高めているグローバルヘルス分野において、日本の果たすべき役割を具体的に提言することを目指しました。特に、日本がホスト国を務める2023年G7サミット、また日本が推進してきたUHC政治宣言のレビューのために開催される国連総会UHCハイレベル会合に向けて、日本が対外的に打ち出すべき政策的な方向性について検討し、その提言を多様な媒体を通じて国内外に発信することで、グローバルヘルス分野における日本の役割についての議論を喚起することを試みました。

 

なお、本事業は、外務省の令和3年度外交・安全保障調査研究事業費補助金(総合事業)に採択され、実施したものです。

 

研究テーマ

①新型コロナ対応の経験を踏まえ、将来の健康危機の発生の備えとなるUHCの達成に向けたグローバル又は地域的なヘルス・アーキテクチャの再構築
②クルーズ船を含む外国船舶における感染症発生事案に際する国際協力の在り方

 

最終成果物

 

  • 提言

 

 

研究会メンバー

城山英明 東京大学公共政策大学院・大学院法学政治学科研究科教授、東京大学未来ビジョン研究センターセンター長[主査]
勝間 靖 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授、国立国際医療研究センター・グローバルヘルス政策研究センター・グローバルヘルス外交ガバナンス研究科長[副主査]
鈴木一人 東京大学公共政策大学院教授[副主査]
  (以下、五十音順)
石井由梨佳 防衛大学校人文社会科学群国際関係学科 准教授
金森サヤ子 大阪大学 CO デザインセンター特任講師、科学技術外交推進会議委員
坂元晴香 東京女子医科大学 国際環境・熱帯医学講座准教授
鈴木智子 JCIEチーフ・プログラム・オフィサー[全体調整]
瀬古素子 叡啓大学ソーシャルシステムデザイン学部 専任講師、世界エイズ・結核・マラリア対策基金技術審査委員
津川友介 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 助教授

 

詫摩佳代 東京都立大学法学部教授
武見綾子 世界保健機関(WHO)コンサルタント、東京大学特任研究員
西野義崇 JCIEリサーチ・アソシエート
西本健太郎 東北大学大学院法学研究科 法学部 教授
野村周平 慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学教室特任准教授
平野志穂 JCIEプログラム・アソシエート[全体調整補佐]
松尾真紀子   東京大学公共政策大学院特任准教授、東京大学未来ビジョン研究センター兼務教員[主査補佐]
   
[アドバイザー]
伊藤聡子 JCIE執行理事
斎藤智也 国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター センター長
瀧澤郁雄 独立行政法人国際協力機構(JICA)人間開発部審議役・新型コロナウイルス感染症対策協力推進室長
牧本小枝 JICA緒方研究所主席研究員
馬渕俊介 元ビル&メリンダ・ゲイツ財団グローバル・デリバリー・プログラム上級顧問
山部清明 公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHITファンド)COO

(2022年3月現在)

*その他、関係省庁ご担当者やその他のご専門家の参加を得て研究会を実施した。

 

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